夢に出てくるもの
近藤聡乃のエッセイ集『不思議というには地味な話』には夢の話がたくさん出てくる。ツイッターなどを見ると、人はよく夢を見ており、その内容も覚えているものだと感心する。
私は全然夢を見ない。見ても覚えていないことの方が多い。
そうすると寝つきがいいのだとうらやましがられることが多い。
確かに、寝つきも寝起きもいいのは私の自慢だ。
ところで、そんな私にも定期的に見る定番の悪夢がある。
よく見るのは歯に関するものだ。口の中で歯をかみしめすぎて、あごが痛くなって口が開かなくなる夢、同じように口の中で歯をかみしめていたら、口の中でどんどん歯が砕けてじゃりじゃりになる夢。歯が抜けて口の中でゴロゴロする夢もある。
もう一つは海に関するもの。波打ち際を歩いていたら、だんだん潮が満ちてきて、気づけば帰る道がなくなっている。お決まりのように、大きな波が押し寄せてきて、どうしようというところで起きる。
どちらも夢占いを見ると、不安を象徴しているようだ。あまりにもわかりやすい。
もう一つ不可解な夢がある。それは、性に関するものだ。人には話したことがないが、ストレスがたまったり、大きなプレッシャーがあるときに、性行為をしている夢を見ることがある。相手は夫や好きな俳優などではなく、二度と会いたくない人や知らない人などむしろ嫌悪感を抱く相手の方が多い。
夢占いでは性行為の相手に未練があるからとかよりを戻したいと出てくるが、これに関しては信じていない。おそらく不安やストレスが、嫌いな人と絶対やりたくない行為をするという形で出ているんじゃないかと思う。もしかしたら自分もそんなふうに、嫌なものの象徴として誰かの夢に登場しているのだろうか。
不安だけでなく、願望もそのままの形で出てくる。以前、ものすごく好きだった人が夢に出てくる時期があった。会えない分夢での記憶の方が生生しくて現実よりもリアルに感じられた。夢の中で私はその人と大学の同級生だったり、一緒に暮らしたりしていたりした。絶対あり得ないことなのに、夢の方がリアルだと感じられ、ずっと夢を見ていたかった。そんな強烈な夢を見ると決まって現実に直面するのが嫌になる。
夫は私とは正反対で、変わった間取りの家に住む夢、あり得ない組み合わせのメンバーで出かける夢、架空のラーメン屋や服屋が出てくるようなつじつまの合わない夢をよく見ている。
夢に不安と願望しか現れないというのは、どうも極端なので、夫のようにほどほどに夢らしい夢を見てみたいものだ。